水素エンジンのメリットと課題
トヨタは開発中の水素エンジンを24時間耐久レースに投入し、実戦で鍛え上げる取り組みに挑んでいます。豊田社長の判断だったようですね。自らもステアリングを握るようです。
安全性や将来性の良いアピールになるでしょう。
この水素エンジンですが、以前にはマツダやBMWが研究しており決して革新的な初めての試みという訳では無いのですが、FCVで開発してきた高圧タンクを流用することで航続可能距離が当時より飛躍的に向上しました。それが今回の実戦投入に繋がっています。
水素エンジンのメリットとして、
・カーボンフリー社会の中で、走り好きの人たちへ嗜好品としてエンジンを後世に残すことができる。
・FCVよりも低コストで水素カーを用意することが出来、水素社会の普及に役立つ。
・高度なエンジン技術ノウハウや部品メーカーの存続に貢献できる。
・ガソリンより高速で燃焼するので、高回転型のエンジンを実現しやすい。
といったことが挙げられます。どれも社会的に非常に重要です。水素社会の普及ももちろんなのですが、クルマ好き豊田社長の本心としては、やはり「エンジン」を未来に残したい、というのがあるのではないでしょうか。一旦消え去った製品の技術は簡単に失われます。記事で見掛けましたが、もうカセットテープのオートリバース機構は新規で作れないそうです。
そんな水素エンジンですが、技術的課題としては
・それでもまだ足らない航続距離(サーキットスピードとはいえ15周でピットインが必要)
・カローラスポーツでさえ後席が全部潰れてしまうほどスペースが必要なので、スポーツカーをコンパクトに作りづらい。
・CO2の発生は無いが、燃焼反応で生成される排ガスが無害という訳では無い。高負荷時にNOxが多く排出される。
といった事が出てきます。航続距離については、FCVのように化学反応ではなく、燃焼反応を動力に変換するエンジンだと効率でどうしても劣ります。ガソリンエンジンで40%程度ですからね。でも、もっと高圧化が進んで300km程度の航続距離が可能になれば嗜好性の高いスポーツカーならば受け入れられる気がします。燃料計の目盛が下がっていくのが見えたと言われるRX-7で大丈夫だったんですから。要は魅力あるエンジンに育て上げられるかどうか。測定器あちこちに付けて走るという今度のレースが楽しみです。