TOYOTA MIRAI
トヨタMIRAIに乗っている。人に知られると、うわ金持ちだ!的な誤解をされがちだが、中古車市場では3万キロ未満のものが200万円を切る価格で売られている。
それにしてもコストがきちんとかけられているクルマである。インパネの造形は手が込んでいるし、大部分は合皮を折り込んで手間をかけて作られている。取り付け精度や剛性も高い。
シートもレクサスと同様、モールドウレタンをシート形状に合わせて成型した上等のものだ。
リアシート周りもフロント同様のコストのかかり方で、普通車にありがちなコストカットの要素が見られない。90年代のセンスの延長線上のレトロフューチャー的デザインの賛否はともかく、空間全てにコストがかけられている。
FCVに必要な水素タンク、発電ユニットの部品価格だけで車両本体価格を上回ってしまうのに、車体にかけられた気合の入れようは異常である。
ベースは当時のFFセダンプラットフォームであるが、そこに多数の補強を追加することで剛性を飛躍的に高めている。乗ってみると分かるが、2014年当時のクルマとしてはステアリングの手応えや剛性感、車体のどっしり感やサスのよく動く感じ等クルマの基本的な素性がちゃんとしている。新型MIRAIやスバルレヴォーグなどの最新プラットフォーム勢と比較したら負けてしまうのは仕方ないが。
動力性能も申し分ない。154ps/335Nmは数値上3L以上の自然吸気エンジンが積まれているようなもの。1850kgの車体を0−100km/h 9.6秒は必要十分。
何よりモーターが生み出す滑らかさは高級車としての魅力を高めている。これはEVでないと出せない世界だ。それをガソリン車と同等の航続距離で楽しむことができる。
航続距離は82MPaの水素ステーションで充填して450km〜500km程度。ヒーターを多用する冬場は他のEV同様、距離が短くなる。
燃料代はレギュラーガソリン換算でおよそ14km/Lといったところ。ラージサイズの高級セダンと考えると妥当だが、HV車には敵わない。
しかし、これほど手の込んだ高級車をおよそ200万で手にすることができ、税金も普通車最小1Lクラスの扱いであり維持費もかからない。近くに水素ステーションがあり、営業時間に入れに行くことが困難でなければ検討の価値ある選択肢なのである。